最近は「年間パス」「通い放題」「定額プラン」といった髭脱毛の広告をよく目にします。
一見すると「1回あたりの料金が安くてお得」に見えますが、医療の現場で見ると、必ずしもそうではありません。

髭脱毛は1回で終わる施術ではなく、毛周期に合わせて複数回の照射が必要です。
たしかに年間パスを購入すれば、一定期間内に何度でも照射が受けられるという安心感はあります。
しかし、男性のライフスタイルを考えると、「年払い＝通い放題」が必ずしも現実的ではないのです。

途中解約できないリスク

年間パスは「一括前払い」が基本です。
一度支払いを済ませると、途中で転勤・引っ越し・多忙などで通えなくなっても返金が難しいケースがほとんどです。

医療脱毛を始める男性の多くは、20〜40代の働き盛り。
仕事の転勤・出張・家庭の事情などで通院できなくなるリスクが常にあります。

私のクリニックにも、他院で年間コースを契約したものの、
「結局、3回しか通えなかった」「返金ができなかった」という相談が少なくありません。
こうしたトラブルは決して特別な例ではなく、“安さ”だけで決めた結果の典型です。

男性は「通院を続ける時間」を確保しづらい

女性の脱毛と違い、男性の髭脱毛は施術回数が多く、期間も長くなりがちです。
毛根が深く、成長サイクルが長いため、照射間隔もやや短く保つ必要があります。

しかし、仕事や家庭の都合で「2か月に1回通うこと」が難しい男性は多いもの。
特に営業職や医師・経営者など、スケジュールが不規則な職種ではなおさらです。

結局、通えない月が続くと「もったいない」と感じながらも放置してしまい、
気づけば有効期限が過ぎてしまう――これが年間パスの典型的な落とし穴です。

都度払いの利点

① ライフスタイルに合わせて継続できる

都度払いの最大のメリットは、「自分のペースで続けられる」ことです。
仕事の繁忙期や体調、家庭の事情などに合わせて、無理なくスケジュールを調整できるのが特徴です。

また、回数を重ねるうちに毛の量が減ってくると、
「そろそろ間隔を空けよう」「メンテナンスだけでいい」といった調整も可能です。
これが、継続しやすく、無駄がない理由です。

② 効果の出方を見ながら調整できる

髭脱毛の効果には個人差があります。
5回でほとんどなくなる方もいれば、30回以上照射を続ける方もいます。

都度払いであれば、効果の出方を見ながら回数を柔軟に調整できるため、
「まだ足りない」「もう十分」といった自己判断にも対応できます。

私は医師として、最初から「○回で終わる」とは言いません。
患者さんの毛質・肌質・ライフスタイルを見ながら、その都度ベストな出力と間隔を設定しています。

一括プランではこうした細やかな対応が難しく、
結果として「同じ設定で無理に通う」ことになり、効果の実感が薄れることもあります。

③ コース完了を焦らず納得できる

都度払いは心理的な負担も軽く、「あと何回残っている」というプレッシャーがありません。
「もう少し減らしたい」「現状を維持したい」など、自分でゴールを決められる自由度があります。

特に髭脱毛は、完全にツルツルにするよりも、
「自然な薄さ」「整ったライン」で満足される方が多い治療です。

途中で満足すればそこで終了してもいいし、
気になる部位だけを残してメンテナンスしても構いません。
都度払いなら、その都度納得しながら進められるのです。

最近の倒産事例から学ぶこと

無理な広告・設備投資が生む歪み

ここ数年、「通い放題」や「年間パス」で集客していた脱毛専門クリニックが、
次々と倒産や閉院に追い込まれています。

背景には、過剰な広告費や高額な医療機器リース、
そして“前払い金”に頼った資金繰りの脆さがあります。

患者さんから先に多額の契約金を受け取ると、
経営者側は「すでに売上が立った」と錯覚し、支出を増やしてしまう。
その結果、資金が先に尽きるという悪循環が起きるのです。

もし倒産してしまえば、施術の途中であっても返金は困難です。
実際、ニュースでも「前払い制の脱毛サロンが突然閉鎖」という報道が相次いでいます。

誠実な経営と安全な継続

私のクリニックでは、あえて「都度払い」を基本としています。
それは経営上の理由ではなく、患者さんにとって最も安心で誠実な形だと考えるからです。

髭脱毛は1回ごとの効果を確認しながら進める治療です。
その都度、肌の状態を診てレーザー出力を調整し、必要に応じて保湿・鎮静の処置を行います。

「契約だから照射しなければならない」ではなく、
「今の肌に最適な照射を行う」――これが医療機関としての姿勢です。

都度払いは収益面では効率的ではありませんが、
通院を続けるうえでの信頼関係を築く最良の方法だと確信しています。

まとめ：安心して通える仕組みこそ、信頼の証

髭脱毛を始めるとき、多くの男性が「金額」だけで判断しがちです。
しかし、実際に続ける上で大切なのは、料金よりも柔軟性と信頼性です。

年間パスが悪いわけではありません。
きちんと通える方にとってはお得になる場合もあります。
ただし、男性の生活リズムや仕事の都合を考えると、
「いつでも中断できる」「1回ずつ納得して通える」都度払いのほうが、現実的でリスクが少ないのです。

そして何より、医療脱毛は“長く付き合う治療”です。
継続のしやすさ、経営の誠実さ、そして医師の責任ある対応――
それらすべてを満たすクリニックこそが、本当に信頼できる選択肢だといえるでしょう。

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