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気になるお悩みや最新治療について、ぜひ参考になさってください。
高齢者に多い「逆さまつげ」とは
年齢とともに「目がゴロゴロする」「涙が止まらない」「まぶしくて外に出るのがおっくうになってきた」とお悩みの方が増えてきます。中には「ドライアイだと思って目薬だけで様子を見ている」という方もいらっしゃいますが、高齢の方でこのような症状が続く場合、「老人性眼瞼内反」と呼ばれる高齢者特有の逆さまつげが隠れていることがあります。
老人性眼瞼内反は、下まぶた全体が内側に倒れ込むことで、正常に生えているまつげまで眼球側に向かってしまう病気です。まつげが角膜に当たり続けることで、ゴロゴロ感だけでなく、充血や痛み、視力の低下につながることもあります。
ドライアイや結膜炎と間違われやすい症状
高齢者の逆さまつげは、最初は軽いゴロゴロ感や涙目から始まることが多く、「年のせい」「ドライアイ」と受け止められてしまうことが少なくありません。
しかし、よく見るとまぶたの縁ごと内側に傾き、白目側にまつげが並んで当たっていることがあります。ご自身では鏡で見ても気づきにくいことがあり、ご家族が気づかれる場合もあります。
- 目薬をさしても、すぐにゴロゴロしてしまう
- 涙があふれて視界がかすむことが多い
- テレビや新聞が見えにくくなってきた
このような症状が続く場合は、「逆さまつげ(老人性眼瞼内反)」の疑ってください。
なぜ高齢になると逆さまつげが増えるのか
老人性眼瞼内反は、簡単にいうと「まぶたを支える組織がゆるんでしまうことで起こる逆さまつげ」です。
まぶたを支える靭帯や筋肉のゆるみ
下まぶたは、靭帯や筋肉によって横方向と縦方向に支えられています。加齢によってこれらの組織が少しずつゆるんでくると、まぶたの縁が内側(眼球側)に向かって倒れ込みやすくなります。
その結果、本来は外側に向かって生えているまつげまでもが、眼球の方に向かってしまい、常に角膜や結膜に触れてしまう状態になります。
瞬きのたびに角膜をこすってしまう
まばたきは、涙を全体に行き渡らせて、目の表面を守る大切な動きです。しかし、まぶたが内側に入ってしまうと、瞬きをするたびにまつげで角膜をこするような状態になります。
この状態が続くと、慢性的な結膜炎や角膜びらん(角膜の表面に傷ができる状態)を起こし、視力にも影響が出てくることがあります。高齢の方で「片目だけいつも赤い」「同じ方ばかり涙が出る」という場合は、注意が必要です。
高齢者の逆さまつげを放置するとどうなるか
「少しゴロゴロするだけだから」と我慢を続けてしまうと、次のようなトラブルにつながることがあります。
- 慢性的な充血や目やに
- 角膜の傷によるしみるような痛み
- 視界がかすむ・二重に見える
- 外出がおっくうになり、生活範囲が狭くなる
高齢の方にとって、視力の低下は転倒や事故のリスクにもつながり、生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。「年のせいだから仕方ない」とあきらめてしまう前に、一度まぶたの状態を含めたチェックを受けていただくことをおすすめします。
高齢者の逆さまつげの治療方法
老人性眼瞼内反は、まぶたの土台から向きが変わってしまっているため、毛抜きでまつげを抜くだけでは根本的な解決になりません。基本的には、手術によってまぶたの形そのものを整えることが必要になります。
保険適用の日帰り手術が基本です
高齢者の逆さまつげの多くは、健康保険の適用範囲内で手術を行うことができます。まぶたの皮膚を切開し、ゆるんだ靭帯や筋肉を整え、まぶたの縁が正しい位置に戻るように調整します。
当院では、局所麻酔による日帰り手術で対応しており、片側でおおよそ30分前後が目安となります。術後はまぶたの腫れや内出血が数日〜1週間ほどみられることがありますが、多くの方は日常生活を送りながら回復していくことができます。
安全に手術を受けていただくために
高齢者の場合、全身のご病気(高血圧、心臓病、糖尿病など)をお持ちの方も多いため、事前に内科や眼科でのチェックをお願いすることがあります。特に角膜や視力の状態、ドライアイの有無などは、眼科での検査が重要になります。
当院は、新潟市内や眼科と連携しながら、それぞれの患者さんに無理のない形で治療方法をご提案するよう心がけています。
また、通院されている眼科がありましたが、そちらからご紹介いただいても構いません。
ご家族が気づいてあげたいサイン
老人性眼瞼内反の患者さんご自身は、「年のせいだから」「目薬をさしていれば何とかなる」と考えて受診を先延ばしにされていることも少なくありません。
ご家族の方には、次のようなサインがあれば、一度まぶたの状態をチェックすることをおすすめします。
- 片方の目だけ、いつも赤く充血している
- 同じ方の目から、いつも涙がこぼれている
- テレビに顔を近づけて見るようになった
- まぶしがって、外出や運転を避けるようになった
下まぶたをそっと下に引いてみると、まつげが内側に倒れ込んでいるのが分かることもあります。気になる症状が続く場合は、眼科や形成外科にご相談ください。
まとめ:高齢者の逆さまつげは「我慢しなくてよい」病気です
高齢者の逆さまつげ(老人性眼瞼内反)は、加齢によってまぶたを支える力が弱くなることで起こる病気です。目薬だけでは根本的な改善が難しい一方で、保険適用の日帰り手術で症状が楽になる方も多くいらっしゃいます。
新潟市にあるやまもと形成外科クリニックでは、形成外科専門医がまぶたの状態を丁寧に診察し、必要に応じて眼科とも連携しながら治療方法をご提案しています。
「最近、目がゴロゴロしてテレビが見づらい」「涙目や充血が続いている」という方や、そのようなご家族を見守っておられる方は、どうぞお気軽にご相談ください。




