治療の基本は袋ごと完全に取り除くことですが、その方法には複数のアプローチが存在します。特に皮膚科で紹介されることがあるのが「くりぬき法」です。
しかし、形成外科ではこの方法を積極的には行いません。その理由について解説します。
① くりぬき法とはどんな手術?
「くりぬき法」は、専用のトレパンという器具を用いて皮膚に小さな穴を開け、そこから粉瘤の内容物や袋をくりぬいて摘出する方法です。
特徴は切開線が非常に小さいこと。従来の切開法よりも術後の傷跡が目立ちにくく、美容的なメリットが強調されることが多いです。
② くりぬき法のメリット
- 皮膚の切開が最小限ですむため傷跡が小さく見える
- 数ミリ〜1cm程度の小さな粉瘤であれば比較的容易に摘出できる
- 処置が短時間で終わるケースもある
特に小さい粉瘤に対しては一定の適応があると考えられます。
③ デメリットとリスク
一見すると魅力的に見える「くりぬき法」ですが、実際にはいくつかの注意点があります。
- 袋を完全に取り除けないリスクが高い
→ 小さな穴から操作するため、嚢胞の一部が皮下に残ってしまう可能性がある。 - 再発率が上がる
→ 内容物だけを排出しても袋が残れば再び粉瘤ができてしまう。 - 炎症を繰り返した粉瘤には不向き
→ 袋の壁が周囲の組織に癒着しているため、部分的に取り残しやすい。 - 結局再手術が必要になるケースもある
→ 傷跡は小さくても、再発して大きな手術が必要になると結果的に負担が増える。
④ 形成外科が標準手術を選ぶ理由
形成外科では、見た目だけでなく再発を防ぐ確実性を最も重視しています。粉瘤の袋(嚢胞壁)を残さず取り除くことが根治の条件だからです。
そのため標準的な摘出術(皮膚を切開して嚢胞を全て摘出する方法)を基本としています。
形成外科での工夫
- 皮膚のしわの方向(皮膚割線)に沿って切開することで傷跡を目立ちにくくする
- 丁寧な縫合で瘢痕を最小限にする
- 部位に応じて美容的な配慮を加える(顔・首など目立つ部位では特に重要)
こうした形成外科ならではのアプローチにより、「確実に再発を防ぎつつ、仕上がりも配慮する」ことが可能になります。
⑤ 患者さんにとって大切なこと
「傷跡を小さくしたい」というお気持ちは自然なことです。しかし、粉瘤は袋を取り残せば再発する腫瘍であることを忘れてはいけません。
一度再発すると炎症や感染を繰り返し、かえって大きな切開や瘢痕が残ってしまうケースも少なくありません。
そのため、形成外科では“再発しない確実な手術”を優先しているのです。
⑥ まとめ
粉瘤治療には「くりぬき法」と「標準的な摘出術」があります。
くりぬき法は小さな粉瘤に対しては有効な場合もありますが、少し大きくなると再発リスクが高まるのがデメリットです。
形成外科では再発を防ぐことと傷跡の仕上がりのバランスを重視し、標準術式を選んでいます。
粉瘤でお悩みの方は、ぜひ形成外科でご相談ください。