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医療レーザー脱毛の“痛みはどのくらい?―医師が教える痛み対策”と照射の工夫
「髭脱毛って痛いんですよね?」
初診のカウンセリングで、最も多く聞かれる質問です。
確かに、髭脱毛のレーザー照射は、他の部位(腕・足・胸など)に比べて痛みが強いのが事実です。
しかし、痛い=危険ではなく、効果がある証拠でもあります。
レーザーは黒いメラニン色素に反応して、毛根の組織に熱を与えます。
その熱が毛を生えにくくするのですが、髭は毛根が太く深いため、
他の部位よりもエネルギーが強く必要になる――これが痛みの正体です。
ただし、医師の立場から言えば、
「痛みを我慢しないと効果が出ない」わけではありません。
むしろ、患者さんにとって安心して続けられるように、
痛みを最小限に抑えながら、効果を落とさない照射こそが大切なのです。
痛みの感じ方は人それぞれ
痛みの感じ方には、実は大きな個人差があります。
私の経験では、次の3つの要素で痛みの感じ方が変わります。
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毛の太さと密度:毛が濃いほどエネルギーが集中し、熱感が強くなる。
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肌の色調(メラニン量):肌が色黒な方ほどレーザー光が分散し、表皮にも熱が伝わりやすくなる。
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照射する部位:鼻下・あご下は神経が多く、痛みを感じやすい。
特に注目すべきは「肌色の違い」です。
日本人に痛みが出やすい理由
医療レーザー脱毛機器の多くは、もともとアメリカで開発されました。
つまり、白人の肌(色素が少ない皮膚)を想定して設計されているのです。
白人の場合、皮膚にメラニンがほとんどなく、レーザーは毛根の黒いメラニンだけに反応します。
しかし、日本人やアジア人は、皮膚そのものにもメラニンが多いため、
皮膚にもレーザー光が一部吸収され、熱や痛みを感じやすい傾向があります。
この人種差を解消するため、
現在の医療用脱毛機には「冷却装置(DCD:Dynamic Cooling Device)」が搭載されています。
照射直前に皮膚に冷却ガスを吹きかけて、表皮を守りながら毛根だけを加熱する
つまり、「冷やしてから打つ」ことで、安全性と快適さを両立させています。
DCD機構の登場により、痛みは飛躍的に軽減しました。
実際、当院で使用している機器もすべてこの冷却システムを備えています。
麻酔は使わない ― その理由とリスク
一部のクリニックでは、痛み対策として麻酔クリームを使用しています。
確かに、痛みは軽減します。
しかし、私は基本的に麻酔クリームを使いません。
理由は2つあります。
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皮膚炎・かぶれを起こすリスクがある
麻酔成分に対してアレルギー反応を起こす患者さんが少なくありません。
実際、これまでに「脱毛後に赤く腫れ上がった」「ピリピリが続いた」という例を経験しています。 -
わずか5〜10分の施術に全身の麻酔効果を使うリスク
吸入式(ガス)麻酔を使う施設もありますが、
たった数分の脱毛のために呼吸抑制などのリスクを伴うのは、本末転倒です。
医療における「安全第一」は、
不必要な麻酔を使わないことも含まれます。
私が行っている“痛みを抑える照射法”
当院では、麻酔に頼らず、以下の3つの方法で痛みを抑えています。
① 照射前に冷却タオルでしっかり冷やす
レーザー照射前に、冷やした清潔なタオルを数分間あてて皮膚温を下げます。
これにより、痛みを伝える神経の反応が鈍くなり、痛みを軽減できます。
また、熱の広がりを抑えるため、赤みや炎症の予防効果もあります。
② 出力を一人ひとり調整
同じ部位でも、毛の密度や肌質によって適切な出力は異なります。
私は初回からすべての患者さんを自分で照射し、
反応を見ながら出力を微調整しています。
「痛みが強すぎないギリギリのライン」で最適化することが、
回数を減らしつつ、安全に結果を出す鍵です。
③ 痛みを感じやすい部位は順番を工夫
鼻下などの強い部位を最後に照射する、
もしくは短い休憩を挟みながら照射することで、
心理的にも身体的にも負担を軽くします。
レーザー脱毛は単なる機械作業ではなく、
痛みを感じるタイミングを読む医療技術です。
「痛み=我慢」ではなく「工夫で変えられる」
痛みを心配している方の多くが、
「友人が痛かったと言っていた」「ネットで“激痛”と書かれていた」
という口コミに影響を受けています。
確かに痛みはゼロにはなりません。
しかし、
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冷却
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出力調整
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施術順の工夫
を組み合わせることで、体感は大きく変わります。
また、2〜3回目以降は毛が減り、毛根が細く浅くなるため、
痛みはどんどん軽くなります。
「初回が一番痛いけれど、そこを超えれば平気になる」
これは私が照射してきた多くの患者さんが口をそろえて言う実感です。
痛みに弱い方でも安心して受けられる環境を
当院では、痛みに敏感な方には
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照射前の冷却を長めに行う
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照射スピードをゆっくりにする
-
声かけをしながらタイミングを合わせる
といったきめ細かい配慮をしています。
「痛みを我慢させない」――
それが医療脱毛の本来あるべき姿です。
患者さんの表情を見ながら、痛みの反応を読み取る。
医師としての経験と観察力が、
快適に続けられる髭脱毛を支えています。
まとめ ― 痛みを恐れず、一歩踏み出してほしい
髭脱毛の痛みは、医師の工夫次第で大きく変わります。
冷却・出力・順番・声かけ――どれも「人の手」が加わる医療です。
そして何より、痛みを理解しているのは、
自ら照射を受け、日々患者さんに照射している医師だからこそです。
痛みの感じ方も、対策の効果も、人それぞれです。
その一人ひとりに合わせた方法で、
「もう剃らない快適さ」へと導くのが私の役目です。
痛みが怖くて迷っている方こそ、
一度医師によるカウンセリングを受けてみてください。
正しい説明と工夫があれば、
「思っていたほど痛くなかった」と感じていただけるはずです。