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眼瞼下垂は保険で治療できる?ネットで増える誤解と正しい判断ポイント
最近、ネット検索の入口で「眼瞼下垂で受診すれば、二重手術を保険でできる」と読めてしまう情報が増えています。私自身も「これは患者さんが迷ってしまう」と感じる場面に何度も出会いました。
まぶたの手術には、機能回復として保険適応になるケースが確かに存在します。ただ、その枠を「二重の見た目を作る目的で、保険を使う方法」として使ってしまう流れが生まれていることには、その考え方には注意が必要です。。
保険で治療できるケースは確かにある
眼瞼下垂は保険診療の対象になり得ます。まぶたを上げる筋肉(挙筋など)の働きが落ち、視野障害や生活上の支障が生じている場合、機能回復を目的とした治療が必要になるからです。
見た目を整える目的で、保険を使おうとする動きには注意が必要です。
一方で、見た目の変化(特に二重のライン)を主目的とする治療は、原則として自由診療の領域です。保険でできることと、美容として行うことの境界が曖昧になると、患者さんも医療者側も判断がぶれやすくなります
眼瞼下垂の保険診療の目的は「機能回復」
眼瞼下垂の保険診療の目的は、本来「まぶたを上げる筋肉の働きが落ちることで、視野が狭くなり、日常生活に支障が出ている状態を改善する」ことにあります。
視力が良くても、視界は狭くなることがある
視力検査で異常がなくても、まぶたが原因で視界が狭くなることがあります。ここは患者さんが一番混乱しやすいところです。「視力は問題ない」と言われたのに、見づらい。説明がつかない。その違和感が検索につながります。
夕方に開きにくい・あご上げ・額のシワは代償行動かもしれない
夕方になると目が開きにくい、無意識にあごを上げて見ようとする、眉毛を上げるクセがある、額のシワが増えた。こうした変化は、視界を補正しようとする無意識の代償行動として起こることがあります。形成外科では、こうした訴えと所見を合わせて、治療の必要性を見極めます。
「保険で二重ができる」と誤解が広がる理由
しかし現場では、まぶたの評価プロセスがショートカットされるケースがあります。
計測より先に二重ライン確認→手術→保険申請、という流れ
「計測をして保険の範疇にあるかどうかを丁寧に判断する前に、二重ラインの希望を確認 → そのまま手術 → 保険申請で診療報酬を受け取る」という流れが存在します。保険適応の評価が結論ではなく、申請のための通過点になってしまうと、診療の目的がずれていきます。
若い女性に多い受診理由と、情報の設計
患者さんの多くは若い女性です。受診理由の主体は「機能回復」ではなく「見た目の変化」への希望であることが少なくありません。けれどネット上の表現が「保険で二重手術ができる」と読めてしまう形で書かれていて、結果として問い合わせや受診が生まれている。
眼科で「異常なし」でも、まぶたが原因のことがあります
ネットの情報があいまいだと、患者さんはまず「目のことだから」と眼科を受診しやすくなります。眼科で「目の中は異常なし」「様子見」と言われても、見えにくさの原因がまぶたにある場合は、本人の不便さが残ります。そこに「眼瞼下垂なら保険で二重ができる」といった情報が重なると、「眼科の説明と違う」と感じて混乱が起きやすくなります。これは誰かが悪いのではなく、眼科と形成外科で診るポイントが少し違うためです。
眼科と形成外科は「診療の目的」が違う
眼科は「眼球疾患・視力・網膜・角膜・水晶体の検査と治療」が主目的です。一方で、まぶたの位置や筋肉の働き、まぶたが原因で視野が狭くなる問題は、眼科では詳しい評価の対象になりにくいことがあります。どちらが正しいかではなく、診ているポイントが違うだけです。
「様子見」「異常なし」という言葉が生まれる構造
そのため、眼科では「まだ大丈夫ですね」「様子を見ましょう」「検査では異常ありません」といった言葉が自然に生まれます。説明が食い違って見えるのは、診るポイントが違うからです。
保険の判断は、きちんとした基準が必要です
ネットでは、言い方次第で人を集めることができます。でも医療は、診断や保険適用、治療の必要性をきちんと決める必要があります。ここが曖昧なままだと、患者さんは期待と現実の差に迷い、医療側も説明や対応に追われて疲れてしまいます。
患者さんの検索心理と、医療側の事情
患者さんの検索心理はこうです。
「視力は大丈夫と言われたのに、なぜか見づらい」
「老眼?疲れ目?でも説明がつかない」
「二重手術を保険でできると書いてある」
「それなら負担が少ないのでは」
保険診療には、認められる病名や手術の枠があります。そこに「保険で行う方が運営上は都合がよい」という事情が重なると、本来は丁寧に判断すべきところが急がれ、保険の線引きが甘くなってしまうことがあります。
保険と美容の線引きが曖昧になると起こること
保険で治療できる枠があること自体が問題なのではありません。問題は、その仕組みが「見た目の希望を叶えるための近道」として使われてしまうことです。
保険と美容の境目が曖昧になると、医療への信頼が少しずつ損なわれます。
保険適応は何で決まるのか
眼瞼下垂の保険適応は、総合的な所見で決まります。
まぶた位置・挙筋機能・視野検査・生活支障・原因分類の総合評価
保険適応の判断では、少なくとも次の視点が重要になります。
まぶた位置の測定、挙筋機能の評価、視野検査の結果、生活上の支障の聴取、原因の分類(先天・後天・コンタクト・こすり癖・術後変化など)。これらを合わせて判断します。
二重ライン設計は評価軸ではない
二重ライン設計そのものが保険適応の評価軸になるわけではありません。ここを省くと、「美容手術も保険でできる」と患者さんが勘違いしやすくなります。
美容医療を否定する話ではない
美容医療は悪ではありません。むしろ必要な治療です。ただし、それは自由診療として適切に提供されるべきものです。
自由診療は必要。ただし保険の枠とは別物
自由診療には自由診療の価値があります。一方で保険診療は、機能回復という制度目的に沿って運用されるべきです。同じ「まぶたの手術」に見えても、目的が違えば枠も違います。
断る規律・決めない診察・必要な治療だけを選ぶ導線
今の時代に必要なのは、断る規律、決めない診察、必要な治療だけを選ぶ導線設計です。入口が自由であるほど、出口の規律が医療の信用を守ります。
患者さんの「もっと早くやればよかった」の正体
私は臨床で何度も患者さんの声を聞きました。
「もっと早くやればよかった」
「視界が明るくなった」
「あご上げ姿勢がいらなくなった」
「額のシワが減った」
変わるのは見た目だけではなく、生活の機能
その多くは「生活の機能回復」による変化です。見え方が変わると、姿勢や疲れ方が変わり、日常が軽くなることがあります。
印象変化は目的ではなく結果として起きる
印象が変わることは結果として起きますが、見た目が変わることはありますが、それは治療の目的というより、結果としてついてくる変化です。
ここを取り違えると医療は疲弊します。
迷っている方へ:まずは評価だけでも
最後に。まぶたの違和感や重さ、視界の欠け、夕方のつらさ、姿勢で補ってしまう癖があるなら、紹介状がなくても外来で評価を受ける価値があります。
相談=手術ではない
手術を決めるためではなく、今の自分のまぶたの機能と位置を確認するための診察です。迷っている段階で受診しても構いません。評価だけで終わっても構いません。
写真・症状メモがあると診察がスムーズ
写真(正面・上方視・眉を上げない状態)や、困っていることのメモ(夕方つらい、目が疲れる、あご上げ、額のシワなど)があると診察がスムーズです。
気になる段階での相談だけでも大丈夫です。
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