リストカット跡について、診察では「傷跡は消せますか?」というご相談を受けることがあります。
進学、就職、結婚、子育てなどをきっかけに、以前の傷跡が気になり始める方も少なくありません。
現在の医療でも、リストカット跡を完全になかったことにするのは難しいということです。
ただし、傷跡の状態によっては、治療によって今より目立ちにくくできる可能性があります。
大切なのは、「完全に消すこと」だけを目標にするのではなく、自分の傷跡に合った治療法を選ぶことです。
リストカット跡はすべて同じではありません
リストカット跡と一言でいっても、赤みが残っているもの、茶色い色素沈着が目立つもの、白く細い線として残ったもの、盛り上がったもの、同じ方向に多数の線状瘢痕が並んでいるものなど、状態はさまざまです。
同じ「リストカット跡」でも、傷跡の種類によって適した治療法は異なります。そのため、まずは傷跡の状態を正しく診断することが重要です。
傷跡治療で最も大切なこと
インターネットでは、「傷跡が消える」「ほとんど分からなくなる」といった表現を目にすることがあります。しかし、リストカット跡の治療に魔法のような方法はありません。
傷跡は皮膚の深い部分に形成された瘢痕組織です。単なる色の問題ではなく、皮膚そのものの構造が変化しています。そのため、どの治療を行っても限界があります。
大切なのは、完全に消すことではなく、できるだけ目立ちにくくすることです。現実的な目標を設定することが、満足度の高い治療につながります。
保存的治療
比較的新しい傷跡では、まず保存的治療を行うことがあります。
保湿、紫外線対策、シリコンジェル、シリコンシートなどは、傷跡治療の基本です。地味な治療に思えるかもしれませんが、レーザー治療や手術を行う場合でも、術後のケアが仕上がりに影響します。
フラクショナル炭酸ガスレーザー治療
当院では、リストカット跡に対してフラクショナル炭酸ガスレーザーを使用することがあります。
この治療は、皮膚に細かな点状の照射を行い、皮膚の再生を促すことで傷跡の質感改善を目指す治療です。
特に、浅い傷跡が広範囲にある場合や、凹凸が比較的軽い傷跡で適応となることがあります。
ただし、一回の治療で大きく改善するものではありません。通常は数か月おきに治療を行い、少しずつ改善を目指します。
また、治療後には赤みや色素沈着が生じることもあるため、照射後のケアが重要です。
レーザー治療の限界
患者さんの中には、「レーザーを当てれば傷跡が消える」と考えている方もいます。
しかし実際には、深い線状瘢痕や多数の傷跡が並んでいる場合、レーザーだけで十分な改善が得られないことも少なくありません。
リストカット跡は皮膚の深い部分に瘢痕が残っているためです。レーザーは有効な治療法の一つですが、万能ではありません。
手術による治療
傷跡が深い場合や、同じ方向に多数並んでいる場合には、手術や炭酸ガスレーザーによる削皮術を検討することがあります。
炭酸ガスレーザーによる削皮術は、傷跡の表面を削ることで、線状に並んだリストカット跡の印象をぼかす治療です。
目的は、傷跡を完全に消すことではありません。
「リストカット跡」と分かりやすい直線的な傷跡を、より自然な傷跡に近づけることです。
たとえば、やけどの跡のような不規則な傷跡に近づけることで、自傷の跡として見られにくくなることを目指します。
ただし、削皮術を行っても傷跡そのものがなくなるわけではありません。赤みや色素沈着、質感の変化が残ることもあります。
そのため、傷跡の深さ、範囲、場所を診察したうえで、適応を慎重に判断する必要があります。
盛り上がった傷跡の治療
傷跡が盛り上がっている場合には、ステロイド注射、テーピング、圧迫療法などを行うことがあります。
肥厚性瘢痕やケロイド傾向がある場合は、早めに治療を開始した方が改善しやすいことがあります。
治療費について
リストカット跡を目立ちにくくすることを目的とした治療は、一般的に自由診療となります。
治療方法や費用は傷跡の状態によって異なるため、診察のうえでご説明しています。
古い傷跡でも治療は可能です
「10年以上前の傷跡ですが治療できますか?」という質問を受けることがあります。
古い傷跡でも、レーザー治療や手術によって改善を目指すことは可能です。
もちろん新しい傷跡とは状態が異なりますが、年数だけで治療を諦める必要はありません。
最後に
リストカット跡の治療において最も重要なのは、傷跡の状態を正しく診断し、その傷跡に適した治療法を選ぶことです。
レーザーが向いている場合もあれば、手術の方が適している場合もあります。また、複数の治療を組み合わせた方が良い結果につながることもあります。
傷跡治療に魔法のような方法はありません。しかし、適切な診断と治療によって、今よりも目立ちにくい状態を目指すことは十分に可能です。
リストカット跡で悩んでいる方は、一人で抱え込まず、まずは形成外科にご相談ください。





