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リストカット跡の切除形成術の実際|手術の流れと術後経過
リストカット跡の手術について、最初に知っておいていただきたいことがあります。
この手術は、傷跡を完全に消す治療ではありません。
今あるリストカット跡を切除し、形成外科の手技で縫い直すことで、別の傷跡に変える治療です。
つまり、リストカット跡を、手術後の傷跡に置き換える治療です。
他人から見たときに、「自傷の跡」ではなく、「けがや手術を受けた後の傷跡」に見える状態を目指します。
これは、患者さんにとって大きな意味があります。
傷跡そのものが残っていても、人目に出したときに説明しやすい傷跡になることで、長袖で隠し続ける負担が少なくなるからです。
切除形成術で目指すもの
リストカット跡の切除形成術は、単に皮膚を切って縫う手術ではありません。
目的は、今ある傷跡を、より自然な手術跡に近づけることです。
リストカット跡は、細い線が何本も平行に並んでいることが多く、見る人が見ると分かってしまうことがあります。
一方、けがの跡や手術跡は、一本の線状の傷跡として見えることが多く、受ける印象が違います。
そのため切除形成術では、多数の傷跡をまとめて切除し、できるだけ自然な方向に縫合します。
それにより、リストカット跡ではなく、手術を受けた後の傷跡のように見える状態を目指します。
手術で過去の記憶との距離をつくる
この治療には、見た目だけではない意味があります。
患者さんの中には、傷跡を見るたびに過去のことを思い出してしまう方がいます。
その場合、傷跡を手術跡に変えることは、過去の記憶との距離をつくることにもつながります。
もちろん、手術で過去そのものを消せるわけではありません。
しかし、毎日目に入る傷跡が、リストカット跡ではなく、治療を受けた手術跡として見えるようになることには意味があります。
「これは治療した傷跡だ」
そう思えることが、前を向くきっかけになることもあります。
私は、リストカット跡の切除形成術は、単なる美容目的の手術ではないと考えています。
患者さんが人目を気にせず腕を出せるようになること。
必要以上に隠さずに生活できるようになること。
そのための治療です。
手術前の診察で確認すること
診察では、傷跡の状態を詳しく確認します。
傷跡の本数、幅、長さ、方向、皮膚の余裕、ケロイド体質の有無、手首や前腕の動きなどを確認します。
同じリストカット跡でも、傷跡の状態は一人ひとり違います。
皮膚に余裕がある部位もあれば、無理に切除すると縫合部に強い緊張がかかる部位もあります。
手術でどこまで改善できるかは、傷跡の状態によって変わります。
手術の流れ
傷跡の状態や皮膚の余裕を確認し、どの範囲を切除するかを決めます。無理に広く切除すると、縫合部に強い緊張がかかり、かえって傷跡が広がることがあります。そのた傷跡の範囲が広い場合には、無理をせず、数回に分けて治療を行うこともありますめ、術後の傷跡ができるだけ自然に見える方向や、皮膚を無理なく寄せられる範囲を考えながら手術計画を立てます。
手術は多くの場合、局所麻酔で行います。意識はありますが、手術部位の痛みは麻酔で抑えられます。麻酔の注射時には痛みがありますが、麻酔が効いた後は強い痛みを感じることは多くありません。
麻酔後、傷跡を含めて皮膚を切除し、深い部分から丁寧に縫合します。深い部分から縫合することで皮膚の緊張を減らし、術後の傷跡が少しでも目立ちにくくなるようにします。これが形成外科における縫合技術の大切なポイントです。
手術時間は傷跡の範囲によって変わります。小さい範囲であれば30分から1時間程度、広い範囲では1時間以上かかることもあります。
抜糸は通常、術後1〜2週間程度で行います。
手首や前腕は日常生活でよく動かす部位です。そのため、抜糸までの期間は無理に動かしすぎないことが大切です
術後の傷跡はすぐには完成しない
手術後の傷跡は、すぐに落ち着くわけではありません。
抜糸直後は赤みがあります。
その後、傷跡は一時的に硬くなったり、赤みが強く見えたりする時期があります。
多くの場合、半年から1年ほどかけて少しずつ落ち着いていきます。
「思ったより赤い」
「まだ目立つ」
「本当に目立たなくなるのか不安」
手術後しばらくは、このように感じる方もいます。
半年から1年ほどかけて、赤みや硬さが少しずつ落ち着いていきます。
術後ケアが結果を左右する
術後のケアも非常に重要です。
テープ固定、保湿、紫外線対策、必要に応じた診察を続けることで、傷跡の経過を見ていきます。
特に、傷跡が落ち着くまでの半年間は大切です。
この時期に無理をしたり、紫外線を浴びたり、自己判断でケアをやめたりすると、傷跡が目立ちやすくなることがあります。
手術後の傷跡をできるだけ目立ちにくくするためには、術後の過ごし方も大切です。
テープ固定や紫外線対策を続けることで、傷跡が広がったり、赤みが長引いたりするのを防ぎやすくなります。
日常生活への復帰
デスクワーク程度であれば、比較的早く復帰できることもあります。
ただし、重い物を持つ仕事、手首をよく使う作業、スポーツ、筋力トレーニングなどは注意が必要です。
傷に強い力がかかると、縫合した部分が広がることがあります。
特に前腕や手首は、日常生活の中で無意識に使ってしまう部位です。
そのため、術後しばらくは「痛くないから大丈夫」と考えない方がよいです。
痛みが少なくても、傷跡に負担がかかっていることはあります。
この手術に向いている人
切除形成術は、傷跡を完全になくす治療ではありません。
今あるリストカット跡を、手術後の傷跡として説明しやすい形に近づける治療です。
人目に出したときに、リストカット跡だと分かりにくくしたい方にとって、選択肢の一つになります。
半袖を着るときの心理的な負担を減らしたい。
過去の傷跡を、治療後の傷跡として受け止めたい。
そのような方にとって、切除形成術は選択肢の一つになります。
傷跡がまったく残らない状態にすることはできません。
そのため、手術でどこまで改善が期待できるのか、手術前にしっかり確認しておくことが大切です。
まとめ
リストカット跡の切除形成術は、傷跡を完全に消す手術ではありません。
今あるリストカット跡を切除し、手術後の傷跡のように見える状態を目指す治療です。
リストカット跡ではなく、治療を受けた傷跡として受け止めやすくなることも、この手術の大切な目的の一つです。
ただし、傷跡が落ち着くには半年から1年ほどかかります。
その間は、テープ固定や紫外線対策などの術後ケアが必要です。
手術後の経過をきちんと見て、傷跡が落ち着くまで丁寧に付き合っていくことが大切です。
リストカット跡の切除形成術は、傷跡を消す治療ではありません。
隠さなくてもよい傷跡に近づける治療です。
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詳しい治療方法については、当院ホームページの「リストカット(自傷瘢痕)・根性焼き」の診療ページをご覧ください。





